CNS-FACEのQ&A
これまでに寄せられた質問を基に、Q&A集を作りました。

Q1 CNS-FACEは本当に家族の心理状態をアセスメントしているのですか?
A1 CNS-FACEは、家族の行動を観察し、ニーズとコーピングを客観的に量的スケールによって表現しようとするものです。したがって、家族本人の主観的な気持ちを引き出してアセスメントしているわけではありません。個々の家族の心理状態をアセスメントするには、CNS-FACEだけで行うには無理があります。

Q2 家族アセスメントでは、家族を1つのユニットとして捉え、家族システム理論を土台にするべきだと思いますが、CNS-FACEには家族システム理論の考え方を取り入れていますか?
A2 CNS-FACEは、危機理論とストレス・コーピング理論を基本的理論として採用しています。もちろん、家族システム理論の考え方は重要ですが、救急でクリティカルな場面で家族のニーズとコーピングをアセスメントするには、複雑な家族システムを念頭に置くよりも、危機理論とストレス・コーピング理論の方が適用させやすいという理由がありました。

Q3 救急やICUに入院した患者家族以外にも適用できますか?
A3 CNS-FACEの開発時にデータを取った施設(部署)は、救命救急センターやICUでした。信頼性と妥当性の検証をしたときも、同じ施設でデータ収集をしました。従って、それ以外の場所で活用できるかは検討されていません。慢性期やリハビリ期にある患者の家族を対象にする場合には、そのままCNS-FACEを適用することは難しいと思います。

Q4 測定ツールとして信用のあるものなのでしょうか?
A4 CNS-FACEは、測定ツール開発の手順として一定の手続きをきちんと踏んでいます。信頼性と妥当性についても、いくつもの側面から統計学的な手法を用いて検証しています。よく雑誌に載っているような単純な心理テストのようなものではなく、学術的に検討を重ねられた測定ツールです。

Q5 ホームページ上でおこなわれるCNS-FACEの算出は、正確に計算しているのですか?
A5 自動計算は、CGIというプログラムによってサーバコンピュータ上でおこなわれます。何度も検算を繰り返しておりますので間違いはないはずです。どうしても心配な方は、マニュアルに載っている計算方法で得られた値と比べてみて下さい。

Q6 ホームページ上で入力した値や計算結果が盗み見られてしまうことはないのですか?
A6 基本的に、自動計算システムに入るには、パスワードが必要です。パスワードを知らない人がアクセスすることは無いと思っていいのですが、こうした管理が万全とは言えません(念のため、時々入力サイトのアドレスを変更しています)。もし、パスワード管理されているサーバ上のファイルを覗くことができたとしても、ホームページ上で入力された値や計算結果が残っていることはありませんので、安心して下さい。

Q7 臨床でCNS-FACEによるアセスメントをすることは、倫理的に問題はないのですか?
A7 臨床ではいくつものアセスメントツールが使用されています。看護では、褥創の評価スケールや痛みの評価スケール、ADL評価スケールなどをよく見かけます。看護過程のデータベースやNOC(看護成果分類)による評価なども一種のアセスメントツールです。臨床心理学でも、性格検査やロールシャッハテスト、精神的健康度テストなど様々なアセスメントツールが用いられています。CNS-FACEは、こうしたツールと同じものです。学術的に信頼性と妥当性も検証していますので、倫理的に問題になることはありません。

Q8 研究でCNS-FACEを用いるときは、倫理的配慮が必要ですか?
A8 もちろん必要です。もっぱら量的なスケールではありますが、個人が特定できなくとも研究データとして公表されるということになれば、データを取った患者家族にその旨承諾を得る必要があるでしょう。

Q9 CNS-FACEのなかで、家族のニーズとして高いものには何がありましたか?
A9 全国8施設の150名の家族を対象とした研究では、全入院期間で接近と保証、情報のニードが高いという結果が出ました。ただし、入院からの経過によって特徴があります。詳細は、文献(文献No.9)やマニュアルを参照して下さい。

Q10 家族の種類によって、ニーズとコーピングに違いはありましたか?
A10 ありました。対象の家族によって、援助のあり方を工夫する必要が示唆されています。これも文献(文献No.9)を参照して下さい。

Q11 ニードの得点が低いと言うことは、そのニードがあまり無いと解釈していいですか?
A11 そう解釈して結構です(もちろん客観的に行動観察した結果の範囲内で)。ただし、2つの側面から考える必要があります。それは、そのニードが元々無くて低いのか、あったけれど満たされて低くなったのかということです。例えば、身体ケアに参加するなどの接近のニードは、入院時はそれほどありませんが、経過するにつれて高くなってきます。このニードが入院当初に低いのは、元々それがないからと思われます。しかし、悲しむとか、怒りとかの情緒的サポートのニードは、入院時は高いけれども、そのうち低下してきます。これは、それが満たされて低くなったということを示しています。

Q12 では、ニードが満たされると得点が下がるということは、家族援助の方法は、得点が減るようにすればいいということですか?
A12 A11のように、ニード得点が低い場合、2つのことを考えなくてはいけません。また、ニードと家族援助の関係は、プロセスで見ていく必要があります。入院当初は情緒的サポートのニードが高いため、それを満足させるように関わって行く必要があると思います。逆に、はじめから低い接近のニードは、そのニードがないから放っておいていいのかというとそうではありません。入院からの経過に従って接近のニードは上昇していきますが、それにあわせた家族援助が必要です。
 ニード理論で有名なマズローは、ニードには欠乏欲求と成長欲求があると言っています。欠乏欲求は、人格内で精神的、身体的に欠乏状態が生じ、これを外界の資源によって補おうとする働きを意味するものです。成長欲求は、人格に充実したエネルギーを外の対象にむけ、成長へのステップにしようとするものです。これについて危機モデル(例えばフィンクのモデル)では、はじめは欠乏欲求で後は成長欲求が生じてくると言っています。すなわち、入院当初の情緒的サポートのニードは欠乏欲求として働きますので、それを満たそうとするような方向に持っていくということになります。そして、経過するにつれて成長欲求が生じるように家族援助をしていくことになります。ニードとしては、接近のニードなどを高くしていく援助が必要ということです。退院間近になれば、成長欲求によるニードも満たされて、すべてのニード得点が下がっていくようにするのが最終的な目標になるかもしれません。
以上、どのニード得点を高くするのか低くするのかは、時期によって違うため、プロセスを踏まえた家族援助が重要です。

Q13 家族援助の成果をCNS-FACEで評価できますか?
A13 ニードが満たされたのか、あるいはニードを引き出せたのかをプロセスから評価することは可能です。プロセスではなく、入院期間中をトータルした得点で評価することはできないでしょう。そもそもCNS-FACEを開発するに当たって設定した作業仮説では、コーピングを起こす動因としてニーズを設定し、それが結果的に心の平衡状態にどのように関わっているかを見ています。したがって、家族援助によって動因であるニーズがどうなったかというところに日々のケアの最終目標を置くのではなく、心の平衡状態がどう安定しているのかを評価すべきでしょう。

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